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睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは

 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)とは、睡眠中に上気道の抵抗が増大して、いびき、低呼吸、無呼吸などをおこし、睡眠の障害とともに種々の合併症をきたす病気です。無呼吸とは睡眠中に10秒以上の呼吸停止があることで、低呼吸とは完全に呼吸停止はしないものの、30%以上の気流の低下と3%以上の動脈血酸素飽和度の低下を10秒以上伴う状態を指します。

無呼吸により酸素濃度も低下睡眠時無呼吸症候群 図1

 SASは睡眠時に症状が現れるという特性上、発症していても自覚していない事が多く、潜在患者数は日本国内で300万人以上と推定されています。その発症の一因として肥満があげられることから、生活習慣病の一つとして取り上げられる機会が増えていますが、肥満が無くてもSASを発症する事も少なくなく、特に日本人など東アジア系の人種では顎が小さいという顔の特徴により非肥満者のSASが多く認められます。

SASの病態SASの病態

 近年、トラックや長距離バスの運転手、電車の運転士などの職業運転手がSASになると危険であるという認識が広まり、国土交通省を中心にSASに対する積極的な対策が行われていますが、SASは交通事故のリスクとなるだけではなく、高血圧、冠動脈疾患、不整脈、心不全などの主要な循環器疾患の危険因子でもあり、またこれら因子の予後悪化因子でもあるため、今日ではその早期発見と適切な治療の必要性が広く認識されています。

居眠り運転による事故率

SASの原因

 SASは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstractive Sleep Apnea Syndrome: OSA)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea Syndrome: CSA)、混合性睡眠時無呼吸症候群に大別されます。SASの病態のほとんどはOSAであり、一般的にCSAはOSAよりも稀です。混合性睡眠時無呼吸症候群はOSAとCSAが混合した病態で、同じ無呼吸発作中にCSAからOSAに移行します。

無呼吸の原因と特徴無呼吸の原因と特徴

 OSAは、睡眠中に何らかの原因で上気道が狭窄もしくは閉塞するために、呼吸運動が認められるにも関わらず呼吸がうまくできず無呼吸となる病態です。OSAの形態的な原因としては、肥満による首周りへの脂肪蓄積、巨舌症、扁桃肥大、アデノイド、上気道への舌の落ち込み、鼻炎、鼻中隔弯曲症、軟口蓋低位などが挙げられ、他には、顎の骨格が要因になっていることもあります。下顎が小さいと舌が入るスペースが狭くなるため、舌が後ろに落ち込みやすくなります。また、骨格が小さいと、少し脂肪がついただけでも上気道が塞がれやすくなります。日本人は欧米人と比べると、それほど太っていなくてもSASになりやすいと言われていますが、これは遺伝的に下顎が小さいことが関係していると考えられています。また、高齢者では加齢に伴って咽頭が長くなり、上気道開大筋の筋力も低下するため、若年者と比べて少ない陰圧でも上気道の閉塞を来たしやすくなっています。機能的な原因としては、睡眠導入剤の服用やアルコールの摂取などが代表的なものです。更には、二次性のOSAとして、甲状腺機能低下症や甲状腺腫瘍、末端肥大症などが原因となっている場合もあります。

縄文人顔と弥生人顔

縄文人顔

弥生人顔

SASの様々な原因SASの様々な原因

CSAは、心不全、脳梗塞、腎不全などの原因により脳内の呼吸中枢に異常が生じて、呼吸中枢から呼吸筋への指令が止まるために胸郭と腹壁の動きが止まることにより起こります。通常であれば、血液中の二酸化炭素濃度の変化に対して脳は敏感に反応し呼吸運動を調節しますが、CSAでは血液中の二酸化炭素の濃度変化に対して感受性が鈍くなるため、無呼吸の状態が発生します。また、頻呼吸と低呼吸を繰り返すチェーンストークス呼吸という状態を呈することも少なくありません。CSAでは症状に乏しく、無呼吸時間が比較的短く、動脈血酸素飽和度の低下も少ない特徴があります。

心不全患者における睡眠呼吸障害の頻度心不全患者における睡眠呼吸障害の頻度

SASの症状

 SASの症状としては、無呼吸、いびき、浅い眠りなどがありますが、睡眠中の出来事であるため本人が自覚することが難しく、殆どの場合は家族など身近な人に指摘されて発覚します。本人が自覚しやすい症状としては、日中の強い眠気や抑うつ、集中力と記憶力の低下、夜間の中途覚醒、起床時の口渇、夜間の頻尿などが挙げられます。男性の場合、加齢により前立腺肥大を伴う方が多いため、夜間の頻尿にそれほど疑問を持たないことが多いですが、SASによる頻尿では、日中の頻尿や排尿障害などを認めません。また、呼吸状態による体内の酸素不足から、起床時に頭痛を感じる方もいます。SASによる頭痛は起床時に顕著になることが特徴です。

SASの主な症状SASの主な症状

 また、自覚症状以外にも、睡眠時に無呼吸や低呼吸になることで、脳や心臓などの酸素を大量に使う臓器への酸素供給量が低下するため、高血圧、脳心血管疾患、不整脈、糖尿病、悪性腫瘍などを始めとする様々な疾患を合併します。更には覚醒反応により睡眠が分断されて睡眠の質が低下することにより、精神や認知活動に影響が及び、精神疾患、行動・認知障害などの合併疾患も引き起こされます。

SASの代表的な合併症SASの代表的な合併症

SASが重症なほど癌の発生率は増加
(Campos-Rodriguez F, et al. Am J Respir Crit Med 2013より引用)
SASが重症なほど癌の発生率は増加

SASの診断

 SASは日中の眠気を認めることが多いため、エプワース眠気尺度(Epworth Sleeping Scale: ESS)を用いて眠気の尺度を検査します。ESSは11点以上は、昼間でも眠気が強い病的領域とされ、SASの疑いが強いと判断されます。しかしながら、ESSの点数と客観的な眠気の診断方法である睡眠潜時反復測定の結果やPSGによるSASの重症度とは相関がなく、SASを認めないにも関わらずESSが高得点な場合や、逆に重症のSASを認めるにも関わらずESSの点数が低い場合なども少なくありません。

エプワース眠気尺度エプワース眠気尺度

エプワース眠気尺度の点数とSASの重症度の関係
(谷川武:Medical Practice 2008より引用)
エプワース眠気尺度の点数とSASの重症度の関係

 SASが疑われる場合、血液中の酸素濃度を調べるパルスオキシメーターと呼吸センサーを装着して睡眠時の呼吸状態を評価する簡易睡眠検査をスクリーニングとして実施します。これは、自宅で実施することも可能な簡便な検査です。簡易睡眠検査の結果から睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、一泊入院して終夜睡眠ポリグラフ検査(Polysomnography: PSG)を行います。PSGは、脳波、眼球運動、オトガイ筋電図による睡眠段階の評価と、鼻口気流センサー、パルスオキシメーター、胸郭・腹壁運動測定による無呼吸・低呼吸の評価などにより総合的な評価を行うもので、SASの確定診断法です。

簡易検査と精密検査(PSG)簡易検査と精密検査(PSG)

 睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数を無呼吸低呼吸指数(AHI)といい、AHIが5以上15未満を軽症、15以上30未満を中等症、30以上を重症と分類します。また、臨床的に動脈血酸素飽和度の低下度により重症度を評価することもあります。

AHIと動脈血酸素飽和度による重症度分類AHIと動脈血酸素飽和度による重症度分類

SASの治療

 SASに対する治療目的は2つあり、1つは睡眠時の無呼吸の改善と睡眠の質の改善であり、もう1つは心血管合併症の予防です。SASの大半を占めるOSAの治療としては、生活習慣の改善、マウスピースなどの口腔内装置(Oral Appliance: OA)の使用、持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure: CPAP)、外科的手術などが挙げられます。OSAの治療においては、高度の口蓋扁桃肥大や二次性OSAを除けば完治する例は少なく、長期にわたってCPAPや口腔内装置によるコントロールが必要なことが少なくありません。

甲状腺機能低下症によるOSAはホルモン補充により改善する
(Rajagopal KR, et al. Ann Intern Med 1984より引用)
甲状腺機能低下症によるOSAはホルモン補充により改善する

 SASは、その原因の1つに肥満が挙げられ、生活習慣との関係が指摘されています。肥満者では体重を減らすことで無呼吸の程度が改善することが多く、10%の減量によりAHIが26%低下することが報告されています。そのため、食生活や運動などの生活習慣の改善を心がけることが重要です。

体重の変化とAHIの変化
(Peppard PE, et al. JAMA 2000より引用)
体重の変化とAHIの変化

 アルコールは睡眠の質を悪化させ、また上気道の筋肉の活動性も低下させて無呼吸を増悪させるため、晩酌はなるべく控える必要があります。喫煙も気道の炎症により無呼吸を悪化させるため禁煙が必要です。その他には、枕の高さの調整や側臥位寝なども重要です。

喫煙のいびきとSASに対する影響
(Wetter DW, et al. Arch Intern Med 1994より引用)
喫煙のいびきとSASに対する影響

 SASの重症度が軽度~中等度の場合には、歯科医師が調整した取り外し可能なマウスピースを用いた治療を選択することがあります。就寝時にマウスピースを装着して下顎を少しずらすことにより気道が確保され、いびきの解消や気道閉塞の改善が認められます。

多様な口腔内装置多様な口腔内装置

 簡易睡眠検査で1時間に40回以上の無呼吸もしくは低呼吸を認める場合やPSGでAHIが20以上の時にはCPAP療法の適応があり、特にPSGでAHIが30以上の重症例においてはCPAP療法が第一選択の治療となります。

CPAP療法の適応CPAP療法の適応

 CPAP療法とは、空気を送り込む装置に接続した鼻マスクを介して気道に陽圧をかけることにより気道を広げて無呼吸の状態を除去する治療法で、ほぼ確実に呼吸異常を防止することが出来ます。CPAPの圧力負荷の方法には、常時一定の圧力を保つ方法(固定圧型CPAP)と、無呼吸の時に自動的に圧力を増加させる方法(自動圧型CPAP)の2つの方法があり、無呼吸の状態に応じて方法を選択します。

CPAP療法CPAP療法

 固定圧型CPAPと自動圧型CPAPで治療効果に差はないとされていますが、高い圧を要する症例や鼻抵抗が変動しやすい症例では自動圧型CPAPの方がコントロールがしやすいとされており、一方、開口が多い症例では固定圧型CPAPの方が不快感が少ないとされています。

CPAPの働きCPAPの働き

CPAPによる最小気道面積の拡大
(赤柴恒人、他:日胸疾会誌 1991より引用)
CPAPによる最小気道面積の拡大

 CPAP療法を行う際には、通常1か月ごとを目安に定期的な通院を行い、治療効果などをチェックします。CPAP療法はSASの治療として有効ですが、CPAP療法だけではSASの根本的原因の解消にはならないため継続して長期に使用するとともに、並行して生活習慣修正を行うことが重要です。

毎日眼鏡をかけても視力が正常に戻るわけではないように・・・CPAPも毎日使っても、使用をやめると元に戻ります。CPAPは眼鏡と同じような感覚で・・・毎日継続的に使用することが必要です。

 成人SASでは、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを発症する危険性が約3倍~4倍高くなり、特にAHIが30以上の重症例では脳心血管疾患発症の危険率が約5倍になりますが、CPAP療法を行うことにより健常人と同等まで死亡率を低下させることが明らかになっています。

重症SASの心血管疾患発症に対するCPAPの効果
(Marin JM, et al. Lancet 2005より引用・改変)
重症SASの心血管疾患発症に対するCPAPの効果

 子供の睡眠時無呼吸症候群では、扁桃肥大、アデノイドが原因であることが多いため、外科的手術が適用となることがあります。成人においても、形態的な原因によるSASに対して咽頭形成術などの外科的治療を行うことがありますが、長期間における有効率は30%~50%と報告されており、CPAP療法と比較して有効性は高くありません。また、SASの根治以外にも、鼻閉によるCPAP継続困難例に対して鼻閉除去によるCPAP継続を目的として鼻手術が行われることもあります。

SASの外科手術SASの外科手術

 その他の治療法としては、ナステントの使用や舌下神経刺激療法などがあり、徐々に施行症例数は増加しています。

ナステントナステント

ナステントの効果ナステントの効果

舌下神経刺激療法舌下神経刺激療法

舌下神経刺激療法の効果
(Woodson BT, et al. Otolaryngol Head Neck Surg 2018より引用)
舌下神経刺激療法の効果

 CSAの治療においては、その原因に合わせた治療を段階的に行います。例えば心不全が原因の場合には、心臓に対する薬がしっかりと使われているかどうかが重要であり、まずは薬物療法の見直しと生活習慣改善の徹底を行います。これらの治療により改善しない場合には、夜間在宅酸素療法(Home Oxygen therapy: HOT)やCPAP、二層式気道陽圧呼吸療法(Adaptive Servo-ventilation: ASV)などの治療を行います。脳卒中や腎不全が原因と考えられる場合にも同様に、病気自体の治療や生活習慣改善を行い、効果が不十分な場合にはHOTやCPAP、ASVなどにより治療を行います。

チェーンストークス呼吸を伴うCSA合併心不全患者の予後に対するASVの効果
(Yoshihisa A, et al. Int Heart J 2011より引用)
チェーンストークス呼吸を伴うCSA合併心不全患者の予後に対するASVの効果

SAS合併心不全患者に対するASVとCPAPの効果の比較
(Kasai T, et al. Circ Heart Fail 2010より引用)
SAS合併心不全患者に対するASVとCPAPの効果の比較

甲斐 達也

かい内科クリニック院長  甲斐 達也(かい たつや)

  • 日本内科学会認定総合内科専門医
  • 日本循環器学会認定循環器専門医
  • 日本高血圧学会認定高血圧専門医
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