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二次性高血圧

二次性高血圧

1) 二次性高血圧とは

 高血圧症には、本態性高血圧症と二次性高血圧症の2つのタイプがあります。本態性高血圧症は、特に高血圧を呈する原因疾患がなく遺伝的要因と生活習慣により起こってくる高血圧で高血圧症全体の85%-90%を占めます。二次性高血圧は下図に示すような疾患のために二次的に高血圧を生じたもので、高血圧症全体の10%-15%が二次性高血圧です。二次性高血圧は、その原因となる疾患に対する治療を行うことで高血圧や高血圧に伴う合併症が改善もしくは治癒する可能性があるため、初期の段階で二次性高血圧を発見して適切に治療することが極めて重要になります。しかしながら、日常臨床では二次性高血圧の診断がなされず本態性高血圧として治療され、治療抵抗性の高血圧を呈していることも多くあるため積極的な診断が必要です。全ての高血圧について二次性高血圧の可能性を判断することが望まれますが、①40歳未満の若年で発症した高血圧、②急速に進行する高血圧、③複数の薬剤を内服してもコントロールできない難治性高血圧、④血圧変動の激しい高血圧、⑤電解質の異常を伴う高血圧、⑥心肥大や腎障害などの臓器障害の進行が早い高血圧などでは特に二次性高血圧の可能性を疑う必要があります。

二次性高血圧の原因疾患と示唆する所見
(高血圧治療ガイドラインより引用)
二次性高血圧の原因疾患と示唆する所見

 上図に示す如く、二次性高血圧の原因疾患は多岐に渡りますが、日常臨床で遭遇する機会の多い疾患としては、腎血管性高血圧、腎実質性高血圧、原発性アルドステロン症睡眠時無呼吸症候群、薬剤誘発性高血圧の5つです。
腎実質性高血圧は、糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎などの腎疾患のために二次的に血圧が高くなったものです。原発性アルドステロン症と睡眠時無呼吸症候群の詳細は別項をご覧ください。

2) 腎血管性高血圧について

 腎血管性高血圧症は、腎実質性高血圧症や睡眠時無呼吸症候群に次いで二次性高血圧症の原因としては比較的頻度が高い疾患です。腎血管性高血圧症は、腎動脈の狭窄あるいは閉塞病変により高血圧を呈する疾患と定義され、腎血行再建の結果、血圧が正常化する事により診断が確定します。腎血管性高血圧症の原因としては、中・高年に多い粥状動脈硬化が最も多く、若年者に好発する線維筋性異形成がこれに次ぎ,若年女性に多い大動脈炎症候群(高安動脈炎)もしばしばみられます。その他の原因としては、先天性奇形、大動脈解離、腎外からの腎動脈圧迫や血栓・塞栓なども稀に見られます。腎動脈の狭窄病変は片側性狭窄が多いものの、両側性狭窄もしばしば認められ、粥状動脈硬化では腎動脈の起始部に、線維筋性異形成では中遠位部に狭窄が好発します。腎血管性高血圧の診断にあたっては、まずは血液検査で血中のレニン濃度の測定と非侵襲的な検査として腎動脈ドップラー検査(超音波検査)が行われます。腎血管性高血圧では、腎動脈の血流速度の増加や腎臓内の血流の変化などが超音波検査で認められます。その他の検査としては、MRIによる腎動脈撮影(腎動脈MRA)や放射性物質を用いたレノグラム、カプトプリル負荷試験なども必要に応じて行われます。これらの検査で腎動脈に高度の狭窄が疑われれば造影剤を用いたCTやMRI、もしくはカテーテルによる血管造影が行われます。造影により高度狭窄病変が認められ、バルーンやステントで狭窄部を広げるカテーテル治療の適応があればカテーテル治療へと進みます。

カテーテルによる腎動脈形成術
(甲斐達也:治療学 2009より引用)
カテーテルによる腎動脈形成術

 腎血管性高血圧症の治療法には、経皮的腎動脈形成術、レニンーアンジオテンシン系抑制薬による薬物療法、および外科手術による血行再建術などがありますが、病因、病型、狭窄病変の程度、合併症の有無などを総合的に検討した上で治療法が選択されます。非動脈硬化性の原因による腎血管性高血圧であれば、カテーテルにより狭窄病変を治療することにより高血圧が治癒することもあります。

カテーテル治療前後の血圧の推移
(甲斐達也:治療学 2009より引用)
カテーテル治療前後の血圧の推移

3) 薬剤誘発性高血圧について

 薬剤誘発性高血圧とは、高血圧以外の治療薬が原因でおこる高血圧です。いくつかの医療用薬剤は血圧上昇作用を有しており高血圧を誘発します。治療抵抗性の高血圧や急にコントロールが不良になった高血圧では、薬剤誘発性高血圧の可能性を考えて原因薬剤の有無につき調べる必要があります。

薬剤誘発性高血圧の原因薬剤と対策
(高血圧治療ガイドラインより引用)
薬剤誘発性高血圧の原因薬剤と対策

 薬剤誘発性高血圧は、薬剤を投与された時点と血圧上昇の診断が一致し、薬剤を中止することで高血圧が改善することで診断されます。薬剤誘発性高血圧はその原因薬剤によって高血圧発症の機序や重症度は様々です。また、原因薬剤を中止もしくは減量することにより高血圧が改善しますが、原疾患の治療のために原因薬剤の中止や減量が難しいこともよくあります。そのような場合には、各々の機序にあった適切な降圧薬で治療を行うことが重要になります。様々な薬剤が薬剤性高血圧の原因となりますが、日常臨床で特に良く遭遇するのは非ステロイド性鎮痛薬(NSAIDs)と甘草によるものです。

NSAIDsによる血圧上昇作用
(Abe K, et al: Tohoku J Exp Med 1980より引用)
NSAIDsによる血圧上昇作用

 NSAIDsはいわゆる「痛み止め・解熱剤」で、特に高齢者や整形外科的疾患の患者では使用されることが多くあります。甘草は肝臓疾患の治療薬や消化器疾患の治療薬の他、多くの漢方薬や健康補助食品などに含まれています。甘草に誘発された高血圧症では原発性アルドステロン症と同様の症状を呈する偽性アルドステロン症がおこります。甘草による高血圧の原因物質は18β-グリチルレチル-3-O-硫酸だと考えられており、この物質は胆汁排泄に関わるトランスポーターMrp2の機能が低下した時にのみ血中・尿中に現れるため、発症には甘草の用量は関係がなく、また発症には個人差があり予測が困難です。医療機関で処方された薬剤以外に健康食品などを使用している人では発見が難しく、治療抵抗性高血圧として加療されていることもあり注意が必要です。

甘草内服による偽性アルドステロン症
(小野歩:臨床高血圧 2000より引用)
甘草内服による偽性アルドステロン症

甲斐 達也

かい内科クリニック院長  甲斐 達也(かい たつや)

  • 日本内科学会認定総合内科専門医
  • 日本循環器学会認定循環器専門医
  • 日本高血圧学会認定高血圧専門医
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