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高血圧とED

高血圧とED(勃起障害)

 日本におけるEDの患者数は、2006年に行われた厚生労働省の国民栄養調査において1,130万人(中等度EDが870万人、完全EDが260万人)と報告されていますが、その原因として高血圧は25%程度の比率を占めており、高血圧患者では適切な治療をしないと、いずれEDを発症する可能性が極めて高くなります。また、図に示すように、高血圧がある人では、無い人に比べEDの比率が倍になります。また逆に、ED患者はEDではない患者に比べて約2倍の頻度で高血圧を合併しています。更には、明らかなEDの症状を示さなくても、高血圧に罹患している人は降圧薬内服の有無に関わらず、陰茎の硬さの不十分さや勃起持続時間の不十分さを訴える人の割合が、高血圧を罹患していない人に比べて20%以上高くなることも報告されています。

高血圧患者のEDの機序
(バイエル社ホームページより引用)
高血圧患者のEDの機序

年齢別勃起障害の頻度
(Urology 2003より引用)
年齢別勃起障害の頻度

 高血圧によるEDは血管性EDに該当し、高血圧では動脈硬化により血管内皮機能が障害されるだけでなく、直接的に動脈の内腔が狭くなって海綿体への血流が阻害されるためにEDを呈します。陰茎動脈は非常に細い動脈なため動脈硬化の症状が出やすく、またEDは動脈硬化の初期から現れる症状の1つであり、脳心血管疾患の高リスク患者において、脳心血管系疾患のイベント発症をEDの有無によって予測できることも示されています。また、高血圧が重症化すればEDも重症化することも知られています。

ED患者と非ED患者の高血圧合併頻度
(J Urol 2005より引用)
ED患者と非ED患者の高血圧合併頻度

高血圧が重症化するとEDも重症化する
(Medicina 2007より引用)
高血圧が重症化するとEDも重症化する

 高血圧においては、降圧薬を用いた治療が行われますが、降圧薬にも性機能を改善する作用のある降圧薬と悪化させる作用のある降圧薬があり、投与する降圧薬の種類によっては薬剤性EDの原因となります。ギリシャで行われた研究の結果では、高血圧患者のうち降圧薬を内服していた患者でのED罹患率が40.4%であったのに対し、降圧薬を内服していない患者でのED罹患率は19.8%であり、利尿薬やベータ遮断薬が投与されている患者の方がカルシウム拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬などが投与されている患者よりも有意にED罹患率が高かったことが報告されています。更にこの研究では、1種類の降圧薬を内服している患者のED罹患率が36.3%であったのに対し、2種類以上の降圧薬を内服している患者のED罹患率は46.7%であったことも報告されています。降圧薬によるED発症の機序としては、高血圧に合併する動脈硬化病変により陰茎への血流が低下しているところに、降圧薬により血圧を下げることで更に陰茎への血流が低下することが一因だと考えられています。

 現在本邦で使用されている降圧薬は、①カルシウム拮抗薬、②アンジオテンシンII受容体拮抗薬、③アンジオテンシン変換酵素阻害薬、④利尿薬、⑤ベータ遮断薬、⑥アルファ遮断薬、⑦アルドステロン拮抗薬、⑧直接的レニン阻害薬、⑨交感神経抑制薬、⑩古典的血管拡張薬の10種類ありますが、利尿薬、ベータ遮断薬、交感神経抑制薬などはEDを惹起する可能性があります。カルシウム拮抗薬は、薬剤の種類によりEDを惹起しやすいものと影響を与えないものがあります。アルファ遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬は、EDに影響しないか、むしろEDを改善するとの報告があります。その他の近年使用可能となった降圧薬に関しては積極的な検討は行われていませんが、EDを惹起する可能性は低いと考えられます。また降圧薬によっては逆行性射精などをおこす種類の降圧薬もあり注意が必要です。重症EDは、バイアグラをはじめとするED治療薬の適応となりますが、降圧薬を内服しているED合併高血圧患者では、降圧薬の種類を変更する事により性機能が改善することもあります。

投与する降圧薬による性機能の違い
(Am J Hypertens 2001より引用)
投与する降圧薬による性機能の違い

 高血圧とEDの関係は、女性においても当てはまり、女性においても更年期以降においては、高血圧により性機能が低下するとされています。下図に示すように、同じように血圧を低下させても降圧薬の種類により、性機能を改善する降圧薬と、そうでない降圧薬があります。

閉経女性高血圧患者における降圧薬服用後の性行動変化
(Am J Hypertens 2001より引用)
閉経女性高血圧患者における降圧薬服用後の性行動変化

 高血圧の治療として、ほとんどの場合において降圧薬が使用されますが、臓器保護という目的以外にも、このように生活の質などに重点をおいた降圧薬選びも行われます。高血圧が原因であっても、EDに対しては、バイアグラ、レビトラ、シアリスなどのPDE5阻害薬が第一選択の治療となりますが、血圧が170/100mmHg以上の方や90/50mmHg以下の方ではPDE5阻害薬は投与できません。性機能障害は、なかなか主治医に相談しにくい訴えではありますが、相談していただくことで生活の質を改善できる場合もあります。

甲斐 達也

かい内科クリニック院長  甲斐 達也(かい たつや)

  • 日本内科学会認定総合内科専門医
  • 日本循環器学会認定循環器専門医
  • 日本高血圧学会認定高血圧専門医
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