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糖尿病

糖尿病

1. 糖尿病とは

 糖尿病は、絶対的あるいは相対的にインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖が慢性的に多い状態となり、血糖値が高くなる病気です。インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖を一定の範囲内におさめる働きをしています。糖尿病の発症には遺伝的な要素がみられますが、生活習慣病の一つで、多くの場合、食生活や運動不足、肥満などに起因します。

一般人と糖尿病患者の平均寿命の比較
(堀田饒、他:糖尿病 2007より引用)
一般人と糖尿病患者の平均寿命の比較

 「国民健康・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる人(糖尿病有病者)と糖尿病の可能性を否定できない人(糖尿病予備軍)は、いずれも約1,000万人(合わせて約2,000万人)と報告されています。糖尿病有病者の人口に対する割合は、男性16.3%、女性9.3%であり、年齢が高いほど糖尿病有病者の割合は高くなります。また、糖尿病有病者の割合は最近20年間で増加傾向にあります。

糖尿病人口は予備軍を含めると2,000万人
(国民健康・栄養調査より引用)
糖尿病人口は予備軍を含めると2000万人

 糖尿病では、血糖値が極端に高い場合には昏睡に陥ったり、命の危険が生じたりするため緊急治療が必要になりますが、そのような危険な状態に陥ることはめったになく、通常は殆ど症状に現れない程度の高血糖です。しかしながら、症状があらわれないにも関わらず、体の中では知らず知らずのうちに高血糖の悪影響がじわじわと広がっていきます。そして血糖値が何年間も高いままで放置されると、将来的に様々な合併症を起こす危険性が高くなります。そのため、糖尿病と診断されたら、血糖値が高くならないようにいつも気をつけておく必要があります。

糖尿病と死亡率
(Kato M, et al. BMJ Open 2015より引用)
糖尿病と死亡率

2. 糖尿病の原因

 糖尿病は原因により、1型糖尿病、2型糖尿病、遺伝子異常による糖尿病、二次性糖尿病、妊娠糖尿病に分類されます。

1型糖尿病

 1型糖尿病は、インスリンを産生・分泌する膵臓のβ細胞の破壊によるインスリンの欠乏を成因とする糖尿病です。若い人を中心に幅広い年齢で発症し、頻度は糖尿病全体の5%程度です。

 1型糖尿病は「自己免疫性」と原因がわからない「特発性」に分類されますが、その大部分は自己免疫性であり、発症には遺伝的要因と共に腸内常在菌、母乳栄養の有無、ウィルス感染などの様々な環境要因が関係します。1型糖尿病では、β細胞の破壊は一般的に進行性であり、病状が進行していくとインスリンを殆ど分泌できない状態になります。1型糖尿病は、その進行のスピードによって、劇症型、急性発症型、緩徐進行型に分類されます。

1型糖尿病の治療状況
(糖尿病データマネジメント研究会より引用)
1型糖尿病の治療状況

 多くの症例では、発病初期に、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体、抗インスリノーマ関連抗原-2抗体、抗インスリン抗体などの膵ランゲルハンス島抗原に対する自己抗体が認められます。

1型糖尿病発症のしくみ1型糖尿病発症のしくみ

2型糖尿病

 2型糖尿病は最も一般的な糖尿病で、糖尿病全体の90%以上を占めます。若い人でも発症する場合もありますが、40歳を過ぎてから発症する場合が殆どです。2型糖尿病は、膵臓の機能低下により十分なインスリンが作れなくなってしまう状態か、もしくは、十分な量のインスリンが作られるにも関わらずインスリンが十分に作用しない状態が種々の程度に合併して、インスリン作用不足を生じて発症し、複数の遺伝因子と加齢、ストレス、食習慣、運動習慣などの環境因子が関与します。

複数の生理的異常が2型糖尿病の病態生理に関与複数の生理的異常が2型糖尿病の病態生理に関与

 2型糖尿病では、一度高血糖になれば、高血糖による糖毒性によりインスリン分泌の低下やインスリン抵抗性の悪化がおこり、更なる高血糖を呼ぶ悪性サイクルを形成します。

2型糖尿病のしくみ2型糖尿病のしくみ

遺伝子異常による糖尿病

 遺伝子として遺伝子異常が固定された糖尿病で、膵臓のβ細胞機能に関わる遺伝子異常と、インスリン作用の伝達機能に関わる遺伝子異常の2種類の異常があります。膵臓のβ細胞機能に関わる遺伝子異常には、インスリン遺伝子、各種MODYの原因遺伝子、アミリン遺伝子、Kir6.2遺伝子、スルホニル尿素受容体1遺伝子などの異常が含まれ、インスリン作用の伝達機能に関わる遺伝子異常には、インスリン受容体遺伝子の異常などが含まれます。

二次性糖尿病

 二次性糖尿病とは、何らかの病気や薬剤投与に伴う糖尿病です。そのため、原因となる病気を治療することで糖尿病が改善します。下記のような病気が原因になります。

二次性糖尿病の原因疾患二次性糖尿病の原因疾患

妊娠糖尿病

 妊娠をきっかけに発覚もしくは発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常を妊娠糖尿病と呼びます。妊娠中は、絶えず胎児に栄養を与えているため、空腹時の血糖値は非妊娠時と比べて低くなりますが、その一方で、胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンが正常に働きにくくなり、食後の血糖値は上昇しやすくなります。妊娠糖尿病でも、妊娠中の管理が悪いと合併症が進行したり、巨大児が生まれるなどの様々な影響が心配されます。妊娠糖尿病は、妊娠前の肥満や妊娠中の体重増加が原因のことも多く、食事療法や運動療法をしっかりと行い、体重管理に努めることが大切です。多くの場合、高血糖は出産後に改善しますが、妊娠糖尿病を経験した人は将来的に糖尿病を発症しやすいとされています。

妊娠中のインスリン需要量の変動妊娠中のインスリン需要量の変動

 妊娠糖尿病になりやすい人として、①家族に糖尿病罹患者がいる人、②肥満のある人、③過度の体重増加がある人、④巨大児を出産した経験がある人、⑤35歳以上での出産の人、⑥尿糖が陽性の人、⑦妊娠高血圧症候群の人、⑧羊水過多症の人、などが挙げられています。

妊娠糖尿病(GDM)のスクリーニング妊娠糖尿病(GDM)のスクリーニング

3. 糖尿病の症状

 糖尿病の症状は気付きにくく、多少血糖が高くなっても全く症状がない人が殆どで、症状が現れるとしても、非常にゆっくり、少しずつ現れます。高血糖がひどくなると初めて、多尿、口渇、多飲、食欲増進、易疲労感、体重減少、勃起障害(ED)などの症状が現れます。更には、血糖値が極めて高い状態では昏睡に陥ることがあります。

糖尿病の皮膚病変
(成澤寛:糖尿病と皮膚病変より引用)
糖尿病の皮膚病変

 糖尿病が長期化すると臓器障害を引き起こします。特に障害されやすいのは神経と血管を中心とした臓器で、神経障害、網膜症、腎症などが起こりやすく、これを三大合併症と呼んでいます。糖尿病性網膜症がおこると、視力低下を起こしたり失明したりすることもあります。糖尿病性腎症がおこると、最終的には腎不全に陥り週に約3回、半日がかりで人工透析を受けないといけなくなります。糖尿病性神経障害がおこると、手足のひどい痺れが続いたり、勃起障害が起こったりすることがあります。その他に足の壊疽も合併症の一つで、足を切断しなければならないこともあります。また、動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞などの脳心血管疾患の危険性も高くなったり、感染症を起こしやすくなったり、虫歯や歯周病、水虫などになりやすくなったりするなど、全身のいたるところに影響が及びます。

2型糖尿病で上昇する癌死亡リスク
(Chen Y, et al. Diabetologia 2017より引用)
2型糖尿病で上昇する癌死亡リスク

 これまでに、糖尿病の治療と血管障害の発症・進展を前向きに検討した研究において、血糖コントロールの良否と罹病期間の長短によって合併症の進行は大きな影響を受けることが明らかにされています。

糖尿病患者における心血管疾患の有病率
(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2003より引用)
糖尿病患者における心血管疾患の有病率

4. 糖尿病の診断

 糖尿病の診断と病状の把握には主に血液検査が用いられます。血液検査では、主に血糖値やHbA1c、Cペプチドあるいはインスリンなどの値を確認します。血糖値は食事によって値が変化するため、血糖値を調べる際には食事との時間関係を確認することが重要です。血糖値の変動を調べるために、糖負荷試験が行われることもあります。糖負荷試験とは、空腹状態で75gのブドウ糖を溶いた液体を飲み、その後120分まで血糖値がどのように変化するかを調べる検査です。特に妊娠糖尿病では、スクリーニング検査として糖負荷試験を行い病気の発見につなげることが少なくありません。

糖尿病の臨床診断のフローチャート糖尿病の臨床診断のフローチャート

 HbA1cは過去1ヵ月-2ヵ月の血糖値の変動を示しており、6.5%以上で糖尿病と診断します。Cペプチドやインスリンの測定では、インスリン分泌機能やインスリン抵抗性の程度を調べます。その他、1型糖尿病と2型糖尿病を鑑別するために血中のGAD抗体の測定なども行われます。

5. 糖尿病の治療

 良好な血糖コントロールを長期間にわたって保ち、糖尿病に特有の細小血管症や、併発しやすい動脈硬化に基づく大血管症の発症・進展を抑制することによってQOLの低下を防ぎ、糖尿病に罹患していない人と同じ健康寿命を保つことが糖尿病治療の目的です。

血糖コントロール目標
(糖尿病治療ガイドより引用)
血糖コントロール目標

高齢者糖尿病の治療目標
(糖尿病治療ガイドより引用)
高齢者糖尿病の治療目標

 糖尿病の治療では、食事療法や運動療法が最も重要です。食事内容を改善したり、適度な運動を生活に取り入れたりしながら、必要性があれば薬による治療を行います。糖尿病の薬は多数あり、種類としては内服薬と注射薬があります。

HbA1c低下とイベント発生リスクの関係
(Stratton IM, et al. BMJ 2000より引用)
HbA1c低下とイベント発生リスクの関係

 内服薬では、インスリンの分泌を良くするものや効きを良くするもの、食事で摂取した糖の分解・吸収を遅らせるもの、糖の排泄を促すものなどがあります。注射薬には、インスリンの分泌を促す注射や、インスリンそのものを外から補う注射があります。治療に当たっては、これらの治療薬のうち作用機序の異なる複数の薬剤を組み合わせることも多くあります。また、治療方法は血糖コントロールの状態や残存した膵臓の機能に応じて選択されますが、1型糖尿病については、膵臓がインスリンを殆ど、もしくは全く作ることが出来ないため、基本的にはインスリンの補充を行います。

2型糖尿病の病態に合わせた経口血糖降下薬の選択
(糖尿病治療ガイドより引用)
2型糖尿病の病態に合わせた経口血糖降下薬の選択

 糖尿病は自覚症状がはっきりしない場合であっても病状が進行するため、適切なタイミングで治療を行うことが大切であり、また治療においては、しっかりとした自己管理が必要です。また近年では、血糖値の中でも特に食後血糖値が脳心血管障害と密接に関係することが明らかにされているため、糖尿病の治療に関してはHbA1cなどの管理だけでなく、食後血糖値そのものの管理も重要になっています。更には、高齢者においても可能であればHbA1cは7以下に保つことが有用とされています。

空腹時血糖値と糖負荷試験後2時間値の死亡リスクとの関連
(The DECODE study group. Lancet 1999より引用)
空腹時血糖値と糖負荷試験後2時間値の死亡リスクとの関連

高齢者におけるHbA1c値と認知症の関係
(Gao L, et al. BMC Public Health 2008より引用)
高齢者におけるHbA1c値と認知症の関係

甲斐 達也

かい内科クリニック院長  甲斐 達也(かい たつや)

  • 日本内科学会認定総合内科専門医
  • 日本循環器学会認定循環器専門医
  • 日本高血圧学会認定高血圧専門医
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