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高尿酸血症

高尿酸血症

高尿酸血症とは

 高尿酸血症は、遺伝的素因に加えて生活習慣が大きく発症に関与する生活習慣病であり、血清尿酸値が7.0mg/dl以上で高尿酸血症と診断されます。これは、尿酸の場合6.8mg/dl~7.0mg/dl以上になると生体内条件では血液中に溶けきれなくなり、体内で析出して尿酸塩の結晶を形成することから定められた値で、長期に継続すると尿酸塩沈着症発症のリスクとなります。正常値は、体内中の溶解度を超える血清尿酸値から設定されたため男女とも同一です。しかしながら、女性に比べ男性のほうが血清尿酸値が高い傾向にあるため、高尿酸血症の頻度は男性で顕著に高く(男女比約20:1)、本邦では30歳以降の男性の有病率は30%にも達します。一方女性では、閉経後に血清尿酸値が上昇するとはいえ、50歳未満で1.3%、50歳以上でも3.7%と低頻度です。職域検診の結果によると、無症候性を含む高尿酸血症の頻度は年々上昇傾向にあり、痛風関節炎の患者数も同様に増加しています。

尿酸塩結晶尿酸塩結晶

高尿酸血症の原因

 尿酸は体の新陳代謝やエネルギー消費によって生じる老廃物の一種で、プリン体が主に肝臓で分解されて尿酸となります。プリン体は細胞の中にあるプリン骨格をもつ生体物質の総称であり、細胞が活動を行う過程において不要になると、プリン体は尿酸に変換されて体外に排出されます。正常な人の体内の尿酸プールは約1200mgですが、一日約700mgが食物あるいはプリン体を再利用する仕組みを経て新たに生合成されており、その内訳は70%~80%が体内で作られるエネルギーの燃えかすと遺伝子が分解されることによって生じる老廃物であり、食品のプリン体から作られる尿酸は20%~30%です。尿酸の主な排泄経路は腎臓であり、尿中に約500mg/日が排泄されます。残りの約200mg/日は消化管を主とする腎外性排泄によって失われ、プール内の尿酸量は一定に保たれています。しかし、尿酸の産生が増えすぎたり、腎臓からの排泄が少なかったりすると血液中の尿酸は増加することになります。高尿酸血症を生じる機序としては、①尿酸産生過剰型、②尿酸排泄低下型、③産生過剰と排泄低下の混合型、④腎外性排泄低下型、の4つがあります。高尿酸血症の人のうち6割~7割の人では腎臓からの尿酸排泄の低下が原因となっていると考えられています。

高尿酸血症の病型分類
(高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインより引用)
高尿酸血症の病型分類

高尿酸血症の合併症

 高尿酸血症の最も有名な合併症は痛風です。血液に溶けきれず結晶化して関節に沈着した尿酸塩が、ストレスや激しい運動、尿酸値の急激な変動などのきっかけで剥がれ落ちると、それを異物と判断した白血球が尿酸塩を排除しようとするためにその部位で炎症が起こります。その反応により血流が盛んになって熱を持ち、腫れ上がって激しく痛みます。それが痛風の発作です。尿酸は低温になるほど溶けにくく結晶化しやすい性質があるため、手足や耳などの末端の関節に痛風発作を生じやすくなります。特に親指の付け根の関節は最も発作が起こりやすい場所ですが、踝、膝、肘など様々な関節にも発作が起こります。また稀には骨の中や脊髄に結節が出来て、骨折や麻痺を起こすこともあります。なお、5年間の経過で痛風を発症する確率は、血清尿酸値が8.0mg/dl~8.9mg/dlで4.1%、9.0mg/dl~9.9mg/dlで19.8%、10mg/dl以上で30%と報告されています。

痛風関節炎痛風関節炎

 高尿酸血症は肥満関連疾患の一つであり、多くの観察研究の結果においても、血清尿酸値の上昇に伴ってメタボリックシンドロームの合併率が増加することや、逆に内臓脂肪の蓄積に伴って血清尿酸値が上昇しBMIが高いほど痛風の頻度も増加することなどが示されています。高尿酸血症は痛風以外にはあまり自覚症状は現れませんが、高尿酸血症自体が腎結石や尿路結石を起こすとともに、血管障害性にも作用して高血圧症、慢性腎臓病、脳卒中、虚血性心疾患、心不全といった病気の発症や進展に影響を及ぼす事が知られており、例えば高尿酸血症患者が心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患を発症する危険性は、健康な人の数倍になることや、血清尿酸値を低下させることにより狭心症や心不全の予防効果があることも明らかにされています。また、痛風関節炎もしくは血清尿酸値が7.0mg/dl以上の高尿酸血症は慢性腎臓病の発症や進展に深く関係し、蛋白尿や血圧とは独立した末期腎不全の危険因子であり、血清尿酸値6.0mg/dl未満への十分な治療介入が末期腎不全への進行を抑制することも示されています。例えば、1,000人あたりの末期腎不全の発症数は、血清尿酸値が7.0mg/dl未満だと1.22人に過ぎませんが、血清尿酸値が7.0mg/dl以上では4.64人に増加します。更には、血清尿酸値が総死亡と関連することも複数の研究で報告されています。

尿酸値と末期腎不全の関係
(Iseki K, et al. Am J Kidney Dis 2004より引用)
尿酸値と末期腎不全の関係

高尿酸血症の治療

 病型が決まれば、病態に沿った治療薬が選択されます。高尿酸血症の治療薬は、その作用機序から尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬の2種類に大きく分類され、基本的には前者は尿酸排泄低下型に、後者は尿酸産生過剰型に対して投与されますが例外もあります。尿酸は最終的に原尿中の約10%前後が尿中に排泄されますが、尿酸排泄促進薬は腎臓の尿細管での再吸収を抑制することで尿酸の尿中排泄率を上昇させるため、腎機能が低下した症例では十分な効果が望めず、中等度以上の腎機能低下例では尿酸生成抑制薬が第一選択となります。尿酸生成抑制薬は作用機序によってアロプリノールと選択的キサンチン酸化還元酵素阻害薬の2種類に分けられます。アロプリノールは本来の尿酸代謝経路を競合的に阻害することで尿酸生成を抑制しますが、腎機能低下時には代謝産物が蓄積することが懸念されるため腎機能の低下に応じて使用量を適切に減量する必要があります。一方の選択的キサンチン酸化還元酵素阻害薬は尿酸とキサンチン酸化還元酵素の結合を阻害することで尿酸生成を抑制する作用のため腎機能低下例にも十分量の使用が可能です。また、選択的キサンチン酸化還元酵素阻害薬は腎機能低下の進行抑制や蛋白尿減少効果についてもアロプリノールよりも優れた作用があることが示唆されています。

尿酸生成抑制薬の作用機序尿酸生成抑制薬の作用機序

 治療薬の開始時期については、痛風関節炎や痛風結節症状を認める場合は血清尿酸値に関わらず食事療法、飲酒制限、適度な運動などの適切な生活指導とともに薬物療法の導入を行います。無症候性高尿酸血症では、尿酸塩沈着がなくても、腎障害、尿路結石、高血圧症、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの合併症がある場合は血清尿酸値8.0mg/dl以上で、合併症がない場合でも9.0mg/dl以上で、生活指導に合わせて薬物治療の開始が推奨されています。

高尿酸血症の治療方針高尿酸血症の治療方針

 本邦において実施された血清尿酸値の平均値と痛風関節炎の再発率の関係を解析した臨床研究の結果では、血清尿酸値を低下させるほど痛風関節炎の再発率も低下しましたが、再発例の平均血清尿酸値は7.01mg/dlであったことが報告されています。血清尿酸値を6.0mg/dl未満にコントロールした場合の再発率は14%に抑えられており、蓄積された尿酸塩を再溶解させるには6.0mg/dl以下の血清尿酸濃度を年余にわたって維持する必要があると考えられています。そのため治療開始後の治療目標は、一律に6.0mg/dl以下とされています。なお、尿酸は強力な抗酸化物質であり、骨吸収の抑制を介した骨密度上昇作用や中枢神経疾患の発症と進行の抑制効果などもあるため、極端な低値でコントロールすることは避ける必要があります。

高尿酸血症の生活習慣修正

 高尿酸血症では、①適正体重の維持、②アルコール摂取の制限、③水分補給、④アルカリ性食品の積極的摂取、⑤適度な運動、⑥プリン体を多く含む食物の摂取制限、⑦乳製品の積極的摂取、⑧ストレス解消、の8項目の生活習慣修正項目があります。

 血清尿酸値は体格指数(BMI)が大きいほど高くなることが報告されています。高尿酸血症の人の多くは肥満気味ですが、このような人が減量すると尿酸値が低下するため、適正体重を維持することが必要です。

適正体重とエネルギー摂取量の計算法適正体重とエネルギー摂取量の計算法

 アルコールはその種類を問わず、その代謝の過程でATP(アデノシン三リン酸)が多量に消費されるために大量の尿酸を生み出します。また、アルコールを肝臓で代謝する過程では、体内に乳酸が増加して腎臓での尿酸の排泄を阻害するため血清尿酸値が上昇します。また、アルコールを摂取すると、抗利尿ホルモンの分泌が抑制されるために多尿となり、脱水傾向になることで尿酸が濃縮されます。そのためアルコールの種類にかかわらず、全ての種類のアルコール摂取を控えることが重要です。中でもプリン体の含有量が多いビール(特に地ビール)は控えることが望ましいと考えられています。なお、アルコール摂取による血清尿酸値増加の増悪因子としては、①飲酒習慣、②空腹時の飲酒、③脱水、④運動後の飲酒、⑤肥満、⑥アルデヒド脱水素酵素の遺伝子多型などが知られています。

アルコールの1日の適量
(高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインより引用)
アルコールの1日の適量

肥満と飲酒の相互作用による高尿酸血症のオッズ比
(Shiraishi H, et al. J Epidemiol 2009より引用)
肥満と飲酒の相互作用による高尿酸血症のオッズ比

アルコールに含まれるプリン体量
(高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインを引用・一部改変)
アルコールに含まれるプリン体量

ビール・発泡酒・ノンアルコールのプリン体含有量とカロリーの比較
(各社のホームページから引用し作成)
ビール・発泡酒・ノンアルコールのプリン体含有量とカロリーの比較

 水分をたくさん飲んで尿量を増加させると、尿とともに尿酸が多量に排泄されて尿酸値が下がるため水分の補給が重要で、心不全や腎不全などの水分制限が必要な病気がなければ1日に2リットル以上の水分摂取が望ましいとされています。また、水分補給は尿路結石の予防にもなります。

 尿のpH(水素イオン指数)は食事の影響により変化します。尿が酸性では尿酸が溶解しにくく、高尿酸血症に合併しやすい尿路結石を招く危険性があります。尿をアルカリ化して中性に保つため、海藻類や野菜、大豆、イモ類などのアルカリ性食品の積極的摂取が必要です。

 運動は体重のコントロールのために積極的に行うことが必要です。ただし、激しい運動や無酸素運動は新陳代謝が活発になり、急激に尿酸の産生が増加するため、ウォーキング程度の軽い有酸素運動にとどめる必要があります。

運動の種類運動の種類

 尿酸が高くなる原因の1つは、食品に含まれるプリン体の摂取過剰です。尿酸の70%~80%は体内で作られるプリン体から産生されますが、プリン体の過剰摂取は痛風のリスクを増加させることも報告されており、更には出来るだけ体内のプリン体のプール量を正常化するためには食事からのプリン体も減らす事が重要であり、動物の内臓や魚の干物などのプリン体を多く含む食品は控えて、プリン体摂取量を400mg/日以内にする必要があります。また、プリン体が少ない食品であっても多量に摂取すればプリン体摂取量は多くなるため、食事の量自体を減らす事も重要です。2日間で850mg未満のプリン体摂取量の人と比べて、2倍のプリン体摂取では1.4倍、3倍のプリン体摂取では2.2倍、4倍のプリン体摂取では4.8倍痛風の再発率が増加することも報告されています。更には、健康食品には多量のプリン体が含まれており、1日分の服用量で200mgのプリン体摂取になるようなものもあるため、健康食品の摂取にも注意をする必要があります。

食品のプリン体含有量食品のプリン体含有量

 牛乳や乳製品は尿酸値を低下させ、痛風のリスクも増加させない効果があることも明らかにされているため、1日200mgを目安に乳製品を摂取することが推奨されます。 精神的ストレスも尿酸値を上昇させることが明らかになっているため、ストレスは出来るだけ減らす必要があります。自分に合ったストレスの解消方法を探すと共に、十分な休養や睡眠を心がけることも重要です。

痛風発作時の対応

 痛風発作は、通常発作24時間後が痛みのピークで、数日~10日ほど経過すれば多くの場合寛解します。痛風発作の前兆がある時には、コルヒチンを内服します。コルヒチンは白血球からの炎症物質の放出を抑えて発作を予防する効果がありますが、発作が起こった後では内服をしてもあまり効果はありません。痛風発作の発症後は、主に非ステロイド性抗炎症薬で炎症の鎮静化を図ります。尿酸値が急激に変化すると痛風を起こしやすく、また尿酸降下薬の服用開始後に発作が長期化したり再発したりしやすくなるため、尿酸降下薬は発作が十分に寛解してから内服を開始し、3か月~6か月かけて徐々に血清尿酸値を6.0mg/dl以下までコントロールして長期間維持します。治療開始後血清尿酸値が安定する6ヵ月以内では、尿酸値の急激な低下により痛風発作が起きやすくなります。高尿酸血症に対して適切な治療が行われないまま放置されると、何度も痛風発作を繰り返し、関節の変形や運動制限などにつながる事があります。

甲斐 達也

かい内科クリニック院長  甲斐 達也(かい たつや)

  • 日本内科学会認定総合内科専門医
  • 日本循環器学会認定循環器専門医
  • 日本高血圧学会認定高血圧専門医
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