高血圧症のトクホ
特定保健用食品、いわゆるトクホは体のバランス調整や生態防御、疾病予防、疾病回復、老化防止などの健康を維持するための機能を有し、個別に生理的機能や特定の保健機能を示す有効性や安全性等に関する科学的根拠が裏付けられているもので、生活習慣病の一次予防を目的として1991年(平成3年)に制度化され、健康に対してどのような機能をもっているかについて表示することを、消費者庁長官が許可した食品を指します。トクホとして認可されるためには、動物実験だけでなく、人間を対象とした試験で効果を証明する必要があり、トクホを使用した人と使用していない人を比較して12週間以上にわたってその効果を検証する必要があります。令和元年末において、トクホ食品は1075品目あり、そのうち血圧が高めの方のトクホ食品は91品目発売されています。トクホには、「健康の保持・増進効果」を発現し体の調子を整える働きのある成分(関与成分)が必ず含まれており、高血圧症に対する関与成分には以下の6種類があります。
① 杜仲葉配糖体
副交感神経を刺激して末梢の動脈や筋肉をやわらげ、血管を拡張して血圧を下げる作用があります。
② ペプチド
穏やかなアンジオテンシン変換酵素の阻害作用により血圧を下げる作用があります。
③ イソロイシルチロシン
アミノ酸の中のイソロイシンとチロシンが結合したジペプチドで、アンジオテンシン変換酵素阻害作用により血圧を下げる作用があります。
④ γ-アミノ酪酸
血管収縮作用伝達物質であるノルアドレナリンの分泌を抑制することにより血圧を下げる作用があります。
⑤ 酢酸
血管を拡張し、血管抵抗を低下させることにより血圧を下げる作用があります。
⑥ 燕龍茶フラボノイド
血管内皮由来弛緩因子である一酸化窒素(NO)を介した血管平滑筋弛緩により血圧を下げる作用があります。
食品の形態は飲料、加工食品、錠菓、ゼリー、粉末スープなど様々なものがあります。高血圧に対するトクホのうち、飲料の代表的なものを下表に示します。
トクホは、ある程度血圧を下げる効果は期待できますが、血圧を下げるための基本は生活習慣の修正であり、トクホはけっして生活習慣修正の代わりになるものではありません。また、トクホは血圧高めの人に適した食品であり、前高血圧症の人には適していますが、高血圧症を既に発症している人に対しての治療手段としては用いられません。